口臭が気になる(20代女性:中等度歯周炎)
口臭は歯周病のサイン?
このケースは20代女性(女子大生)が口臭が気になるという主訴でご来院したときのものです。ご本人は口臭が気になるという主訴であって、少しも歯周病であることを疑っていませんでした。
結論から言うと、この症例は中等度歯周炎(歯周ポケットが4mm〜6mm程度の状態)と診断されたのですが、このケースは口臭と歯周病が関係する代表例とも言えます。
このページでは、このケースを用いてどうして口臭と歯周病が関連するのかをご説明します。
口臭の種類
まず口臭の種類を知っていただきまましょう。口臭は大きく分けて4つに分類されます。
- 生理的口臭:健常者のほとんどに発現する口臭。起床時、空腹時などに強くなる。
- 病的口臭:呼吸器系や消化器系の病気などによるものもあるが、多くはむし歯、歯周病など口腔内トラブルや舌苔などが原因
- 外因的口臭:にんにくや,アルコールの摂取に伴って発生する口臭(本来口臭ではない)
- 心因的口臭:自臭症とも呼ばれストレスや精神的に不安定で口臭があると思い込んでる。
このように4つに分類され、この内歯周病に関連があるものは、「病的口臭」です。
歯周病を検査するにあたり、口臭は歯周状態を知るための重要な情報で、口臭の原因となる物質の毒性が歯周病の進行にも影響します。
歯周治療を正しく行うことで、口臭はなくなります。一方、口臭を見過ごさないよう歯科医院側としては注意しなければなりません。
どうして歯周病になると口臭が発生するのか?
このケースに限らず、歯周病になると病的口臭がします。
理由としては、口腔内にいる嫌気性菌(細菌)が食べかすや粘膜細胞などのタンパク質を取り込み、新陳代謝として分解することで、「揮発性硫黄化合物」という口臭成分が発生します。
この揮発性硫黄化合物は、
- 硫化水素(卵が腐ったような臭い)→舌苔
- メチルメルカプタン(たまねぎが腐ったような臭い)→歯周病
- ジメチルサルファイド(キャベツが腐ったような臭い)
この3つが主な成分です。
この中でメチルメルカプタンと呼ばれるものが歯周病に関連しており、舌苔が原因で発生する舌苔由来の口臭よりも6倍も臭いが強いと言われています。
歯周病が進行し、メチルメルカプタンが発生するとマスクをしていても臭いが漏れ出すほど強い匂いになり、他人に口臭があると気づかれてしまいます。
歯周病が進行すればするほど、口臭は強くなります。歯周病以外には重度の虫歯も同じような臭いが発生します。
歯周病を改善すれば口臭は治まる
このケースは中等度歯周炎診断され、患者様も驚いた表情をしていました。まさか、歯周病に罹患しているとは思われていなかったようです。
しかし、勇気を持ってご来院されたことで、外科治療をせずに歯周病を改善させることができました。
無事口臭がなくなり、患者様は現在も定期検診で衛生的な口腔内を維持されています。口臭を感じ、その他に歯がグラつく・お口がネバネバする・歯茎から血が出るなどの症状がありましたら、歯周病に罹患している可能性がありますので、勇気を出して歯科医院へ行くことをおすすめします。
この症例の詳細
- 主訴:口臭が気になる
- 行った検査:歯科ドック(口腔内の精密検査)
- 行った治療:歯周基本治療(ブラッシング指導(歯ブラシ・フロスの選定も行いました)・主に歯肉縁下歯石の除去(SRP)
- 治療期間:約5ヶ月
- 治療費用:トータル15万円
- 症例のリスク:ブラッシングを怠ると再発してしまう。
ポケットが深くなると、歯間部に隙間ができてしまうため、放置せずに早めに治療することが求められます。
医療監修:若林健史